公開 2024.06.27 更新 2024.12.10Professional Voice

デジタル庁での経験を武器に法律を超えたアドバイスをしたい
亀山 大樹弁護士が目指す企業支援の可能性

インタビュー

「正しさ」に対する理不尽を感じていた学生時代。ニュースをきっかけに法律の世界に惹かれ、弁護士を志した亀山 大樹弁護士。

Authense法律事務所に入所後、幅広い案件に取り組み、10年目にはデジタル庁に出向。政府調達や法務の体制整備に尽力した。デジタル庁での経験も活かし、調達支援やデジタル関連の法律問題に取り組む。

目次
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1.

法律の世界を知りモヤモヤが晴れた

弁護士を志したきっかけについて教えてください。

正しいことを言っている人よりも、声の大きい人や人気者の意見が通ってしまう場面ってありますよね。皆が笑っているから笑う、人気者が言ったから面白いといった感じで周りの空気を読んで反応することが、学生時代の自分はとても苦痛だったんです。

モヤモヤを抱えていた中、高校生の時に薬害エイズ事件のニュースを見て法律の世界を知りました。

裁判によって事実が明らかになっていく様を見て、客観的なルールに基づいて正しいことは正しい、と決まる世界があることを知って感動しました。

ご自身のモヤモヤが裁判の結果によって晴れていったんですね。実際に弁護士になられて、イメージ通りだった部分やギャップはありましたか?

ご相談をいただく内容は綺麗な話ばかりではないですし、苦労する事も多いです。だからこそ、どんなときでも主張するべきことは主張して、依頼者の利益のためにやっていく必要があります。客観的な基準にフォーカスし続けていきたいと思います。

インタビュー_亀山 大樹

2.

Authenseへの入所、そしてデジタル庁へ

最初に働く事務所としてAuthenseを選んだ理由を教えてください。

ロースクールで元榮が講演をする機会があり、弁護士ドットコムの話を聞いて、今までの法律事務所像、弁護士像とは違うなと感じました。挑戦できる雰囲気が面白いと思いましたね。

入所されてからはどのような案件に取り組まれていましたか?

建物明渡訴訟から始まり、離婚、相続、債権回収、交通事故、刑事事件、顧問などいろいろです。横浜支店の支店長も長くやっていて、相続事件や関係する不動産の案件も多かったですね。

かなり幅広いですね。そして10年目にはデジタル庁に出向されます。

所内の募集に手を挙げました。直近で顧問をしていた会社がテクノロジー系のスタートアップで興味を持っていたんです。

また、コロナをきっかけに事務所内でもテレワークや業務効率化の議論が進んでいて、デジタルやテクノロジーに関する法律や規制をもっと深堀りしていきたい、という強い関心もありました。

出向されてからはどういったことに取り組まれましたか?

政府が民間にシステム構築や改修、保守点検を依頼する際の決まりを定めた政府調達制度というものがあるのですが、なかでも政府情報システムの調達に関する制度の改革を検討するチームに所属しました。

制度の改革、運用の見直しなどあらゆる方向から改革・改善を進める事になりましたが、各省庁に困っていることを聞いたり、複数のベンダー事業者にも聞いたりしながら、使い勝手の良い制度を目指していました。

事務所で働いていた時とはだいぶ違う感覚があったのではないでしょうか?

そうですね。大きな組織で働くことは初めてだったので、だいぶ違う雰囲気はありました。

また、事務所では個人のお客様と接することも多いのですが、デジタル庁では別の省庁の方や事業者の方と組織としてコミュニケーションを取るので、その点でもだいぶ異なりました。

制度や法律について深掘りして、建設的な議論を重ねられることは面白かったですね。

インタビュー_亀山 大樹

3.

法務チームの立ち上げからアナログ規制の見直しまで

他にはどのような事に関わられたのでしょうか?

デジタル庁における法務チームの立ち上げに関与しました。

政府では、調達に関して法務が契約書をチェックする、という慣行はあまりなくて、政府側で用意した契約書の雛形をもとに締結することが一般的です。

もともと政府調達によく参入している大手ベンダーは内容もよく理解されているので、そこまで交渉は入らないのです。

一方、政府全体ではスタートアップや中小企業など幅広く参入を促しています。特にデジタル庁は中小企業からの調達を増やしていました。

普段、省庁の調達に慣れてない会社の方々なので、交渉が入り、契約書のチェックが必要になってきたのです。

調達に関わる事業者の裾野が広がることで契約書チェックの体制整備が必要になったのですね。特に印象に残っている出来事はありますか?

システム調達において知的財産権の帰属が問題になったとき、事業者との交渉の席に私も法務の一員として同席したことは印象に残っています。

実際の交渉まで同席されたのですね。デジタル庁では調達関係が主な業務だったのでしょうか?

他にも色々な取り組みに関わることができました。

デジタル臨時行政調査会の事務局にも所属し、アナログ規制の見直しに携わりました。お店や事務所などに許可証などの掲示を求める書面掲示規制をデジタル化する取り組みや、公示送達のデジタル化の担当になり、各省庁とコミュニケーションを取ったり、プライバシーとの関係について専門家の意見を聞いて検討しました。

また、データ利活用のためのアクションプランを作成したチームにも所属しました。AI活用のためにデータのオープン化を進めたり、データの形式、項目、質を整備していこう、という取り組みです。データ利活用の壁に直面している事業者からの要望なども聞きながら進めていきました。

そこでの縁もあって『デジタル関係法のツボとコツがゼッタイにわかる本』(秀和システム)という書籍の執筆にもつながりました。

デジタル関係の法律は複雑ですし、技術の発展が早いから法律の改正も頻繁です。変化に対応するために自分も頑張りたいなと思っています。

インタビュー_亀山 大樹

4.

デジタル領域のプロフェッショナルとして調達に関わる方々を支援したい

最後に、今後のビジョンについて伺えますか。

デジタル庁で調達に関わった経験は活かしたいですね。ニッチな分野なので専門とされる方は多くないと思うのですが、政府調達は予算規模もあります。

より多くの中小企業の参入を促す政策も進んでいるのですが、調達制度について理解を深めないと交渉のポイントがずれてしまうんですよね。

調達に興味関心のある企業のご支援をしたいと考えています。

また、デジタル関係の法律に関わる案件は多く取り組んでいきたいですね。データの利活用はこれから増えていくので、必要な法律、契約に強い弁護士でありたいです。

–デジタル庁でのご経験が活きますね。

デジタルについて不安な方も多いと思います。使われている用語や、データの扱いについてよくわからないまま契約を結んだり、サービスの導入をしている方もいるかもしれません。

ベンダーに丸投げでお願いしたら全然違うものが出来てしまった、というケースもよく聞きます。

自分はデジタル庁で発注者側としてベンダーの方に向き合ってきました。

発注者の方々に対しては、契約書を見るだけでなく、適切な導入を支援するようなアドバイスも行いたいですし、ベンダーの方々に対しては、ユーザーの視点を伝える取り組みもしていきたいですね。

インタビュー_亀山 大樹

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Authense法律事務所
弁護士

亀山 大樹

(第二東京弁護士会)

早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。遺産、離婚などの家事事件、不動産会社やメーカーの顧問業務、交通事故の示談交渉、労働問題など幅広い分野で精力的に活動する。また、法律相談会、遺産相続や任意後見、家族信託に関するセミナー・講演にも積極的に取り組んでいる。

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